批判ではなく批評
今週はまず映画を1本。『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』という90分の会話劇。レストランのテーブルで2人の人物が話し合うだけなんですが、スリリングで滅法面白い。これはすごく演技の上手い若手と中年の俳優を連れてきてぜひ舞台化するべきですね。ミュージカル『PRETTY WOMAN』は華やかでとても楽しかった。田村芽実さんは『ダ・ポンテ』の時に「これはタダモノではない!」と仰天したものの悔しいかな彼女の舞台を観ることができたのはそれ以来。やはりタダモノではなかった。細い身体でパワフルな歌声、はすっぱだけど純真でかわいらしい女性を演じて爽快でした。城田優さんの舞台を観るのもだいぶ久々、ずいぶん自信をつけて大物になったなぁという印象。福井晶一さんがとても良い役でしたね。続いて、マニアックに大好きで様々なバージョンの上演を観て来ている『十二人の怒れる男』のミュージカル版を観ました。これはちょっと色々と違和感。ミュージカルというものは音楽が物語や人物の心情の表現を助けていなければならないはずが、今作にあってはセリフの理解の邪魔になっていた気がするんです。この緻密な密室劇をミュージカルに、ということ自体にそもそも無理があるのでは。この作品で陪審員たちは被告の少年(登場しない)をなんらかの同情や愛情のようなものをもって“救う”ために討議しているのではなく、ただ彼を有罪とすることに合理性があるかどうか、それについて1人1人がそれぞれの人生を曝け出し残酷に傷つけあってまで話し合いをするのです。この作品の世界観から浮いた印象の女性を冒頭から登場させて「少年に愛を」的なことを歌わせるのはミスリードではないか。元の作品では最後にようやく全員の意見が一致した時、彼らは後腐れなくあっさりと解散して行く。そのラストシーンになんだか大団円的なベタな温度を持たせた演出になっていたこともいただけない。そこに情を持ち込むのはこの作品の方向性と違うんじゃないかな。このミュージカル版ではこうなんです、と言うのであればそうなのか、と飲み込むしかないのだけど。おまけに音楽的な声を持つ歌い手があまりいなかったこと、数人の手練のミュージカル畑の俳優でさえもハコの音響の悪さのせいもあって歌の耳当たりが硬く、空間にも心にも響かなかったこともだいぶマイナスポイント。悪くばかり書いているけど一座は真摯に取り組んでいて充分に好感は抱いたし、楽しんだことは確かです。これは批判ではなく批評のつもり。そしてその翌日には新橋演舞場で『お光とお紺』を観ました。寺島しのぶと藤山直美という演技巧者2人の対決、ゴジラ対ガメラを観に行ったつもりが(笑)とてもかわいらしいシスターフッドの物語でした。やっぱり巧いなぁ、本当に巧い。なんだろうねこの引き込まれちゃう感じは。このBlogでも何度も褒めている葛山信吾さんが今回もステキ。ただ舞台転換のための暗転の多さと長さが玉に瑕。客席の多くを占めるお年寄りのお客さんにはこのぐらいのゆったりテンポでいいのかな。
ウンブライルの引退が発表されて淋しい私。土曜のクイーンCはマルガ、モートンアイランド、ヒズマスターピースをこの順番で。日曜、共同通信杯はロブチェン、ベレシート、リアライズシリウス。京都記念はヘデントール、エコロディノスと人気馬を頭に乗っけてサフィラ、ヨーホーレイクへ流れ落とす。
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