演ずる力と心
10月30日、めぐろパーシモンホールにて花岡陽子フラメンコ公演「うないおとめ」を観てきました。万葉集に詠われ謡曲「求塚」にもなった生田川伝説を元に作り上げられ、過去に好評を得て公演を重ねた舞踊作品を新たに上演するにあたり、主演のうないおとめ役に荻野リサさんが抜擢されたのです。演劇的な要素が濃い舞台になるとのことで、芝居好きの私としてはワクワクしながら劇場に向かいました。幕が開いて、舞台中央に立っているリサさんのそれはそれは華やかなこと、目を引きつけること、まさに主役の風格でした。こういった大きな舞台で映えることといったら文句ナシです。今回の作品では踊り手は踊りだけではなく物語上の役を演じなければなりません。リサさんは演技面でも見事なものでした。冒頭の祝祭的な場面での輝くような笑顔から、2人の男性に求愛されて苦しみ抜いた挙げ句に死を選ぶほどの苦悶まで表情と感情表現に幅があり、劇場の空気を掴んで放さない力は演劇的に大変優れたものでした。私みたいなフラメンコ素人にはわからないけれど、たぶんいつでもフラメンコダンサーは物語を踊りで表現しているのでしょうね…だからこそこういうこともできるのだ、と。表現することの根本は踊りも演技も同じなんですね。フラメンコのダンサー以外にもコンテンポラリーダンスや舞踏の踊り手も参加して、とにかく見応えのある舞台でした。これは後々に語り継げるものを観たぞ、という感じ。
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